かごめかごめ (お侍extra 習作41)

          〜千紫万紅、柳緑花紅 口絵もどき

 


          




 中空に何の支えもなく浮いている訳でなし。大した足掛かりもない雷電や紅蜘蛛の肩や腹まで軽々と上り詰められるほど、足腰が丈夫で強靭な二人だったので。ザイルもハーケンも使わず、横っ腹の崖からの垂直登攀にて、小屋の内部からの死角になっていた一角へ、真下から速やかに真っ直ぐ近づいてのそれから。
『…。』
 打ち合わせは既に済んでいたので、目配せ一つで作戦は決行された。まずはと久蔵が、屋根の上へ軽々とした跳躍で飛び上がり。何にもない青い空を背景に、真っ赤な長衣を翻しつつも物音ひとつ立てずに着地すると。何を思ってのことなやら、唐突に唄い始めた彼であり。

  ――― か〜ごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる。

 そういえば。日頃の会話からして語彙の少ない、極端なほど寡黙な彼だから、歌を唄うところなぞ勘兵衛でさえ今まで一度も聴いたことはなく。
“だが…。”
 そういえば、七郎次が“それは端麗な口笛を吹かれますよ”なんて言っていたから、音感は悪くはないのかな。あ、いやいや。口笛と言っても鳥の声と間違えたアレのこと。(『
ひいかち』参照) 曲だった訳じゃあなし、それではこれは、七郎次も知らぬことなのかも。
“…。”
 そういった一連の雑念が、ざっと脳裏をよぎったのも ほんの一瞬のことであり、

  ――― 後ろの正面だ〜れ。

 一節が終わったその瞬間、小屋の中の落ち着きのない様子から、彼は一体何を嗅ぎ取ったのやら。頭上から届いたは、間違いなく…相棒のあの双刀が鞘から抜き放たれた鋭い気配。
『床から脛下までの空隙は絶対に斬るな。』
 ただそれをだけ注意事項として言い置いて、後は 自分が動き出すのが合図だからと、そんな呆気ない打ち合わせだけをした彼らであり。さっきの童歌の意味だって、勘兵衛には知らされてはいなかったのだけれど、
“…。”
 合図が来たからにはと、騒然としている内部の模様を耳と肌で聞く。彼らが二人掛かりで当たる必要もなかろう手勢であり、現場の狭さでもあったので。支障があれば呼ぶからと、つまりは“勘兵衛は何もしないで見ていればいい”と小さく微笑った久蔵が、とたんと…実際にはそんな音さえ立てずに、瓦礫の雨の後から小屋の内部へと降り立ったのが気配で嗅げた。勘兵衛が立っている側の壁は、何とか辛うじて残っているが、それ以外は惨憺たるもの。外へとばったり倒れることで、内部を芝居の書き割り背景みたいに露呈させている。そんな板壁一枚隔てた向こうの様子が、その輪郭を急に強めて拾いやすくなったのは、

 「…誰ぁれ?」

 幼い声のその持ち主、目的の少女が無事だったのへと向かいつつ、久蔵が自分の気配を故意に現したからだろう。無論、警戒する必要がなくなったからでもあって、
「久蔵。」
 壁越しに声を掛ければ、ささやかな風籟の唸りと共にその壁が刻まれて。恐らくは目にも止まらぬ早業で、太刀にて障害物を刻んだ彼だったに違いなかったが、今はそんな乱暴さへも小言は言わず、
「その子か?」
「ああ。」
 彼らの短いやり取りを、青年の腕に抱えられて聞いていた少女は、
「…何処も痛くはないか?」
 こちらもまた初見の壮年から尋ねられ、だが、ううんと素直にかぶりを振って見せた。
「だいじょーぶです。」
「そうか。」
 いかにも精悍で、いかにも農民には見えないおじさんのお顔が、目元を細めて微笑うと急に優しくなったのへ、やっとのこと小さく笑い返して。
「お侍様たちが助けてくれたですか?」
「ああ。お主の祖父殿から呼ばれての。」
 癖のない黒髪のおかっぱ頭を“いい子だ”と撫でてくれた手の大きさに、ますますのこと嬉しそうに笑った童女へ、若い方のお武家様も本当に本当に小さく微笑ってそれから、
「…島田。」
「ああ。先にこの子を村へ。長老へ、綱と見張りの手配を告げて来てくれ。」
「承知。」
 それは手際のいいことに、やはり手短なやりとりをしてからの即、それぞれの後片付けへと行動を起こして彼らであった。





 見えてはいるが近寄れない。何とも歯痒い籠城現場が、何の前触れもなくの一気に粉砕したのを村から目撃した大人たちが呆気に取られて…幾刻か。何が起きたんだかを確かめに行こうか、いやいやお侍様がたに任せた以上、余計なことをしちゃなんねと、長老たちが額を寄せ合い問答していたところへと、

 「じっちゃまっ。」

 皆が待ち望んでいた、幼い声が元気に響いて、
「おタエっ!」
 母親だろうご婦人が、泣きながら駆け寄って来たのへと、小さな戦利品を手渡した金髪痩躯のお侍様は、
「…。」
 自分を見つめて来る村人たちへ、ぼそりと言った。
「丈夫な綱と縄、それから腕に自信のある者を何人か、現場へ寄越してほしい。」
「と申しますと?」
「賊を縛り上げる手が足りぬ。」
 久蔵の言葉に、長老殿が少々意外そうに目を見張った。それへと“なんだ?”という視線を投げれば、
「いえ、あの。仕置きして下さったのでは?」
 相手はこんな幼い子供を攫った極悪人だ。成敗という意味合いから、てっきりその人斬り包丁にて切り殺してくれたものだとでも思っていたらしいのへ、

 「あの娘の目の前で、皆殺しという惨劇を繰り広げてもよかったのか?」
 「あ…。」

 別に怒ってはいない久蔵だったのだが、抑揚のない声が憮然としているように解釈されたか。
「とんでもございませんっ。」
 地べたへ頭を擦りつけんばかりに平伏されてしまい、それへこそ閉口してしまったり。

 “…俺だけではないではないか。”

 というのも、勘兵衛が“好きにしていい”と言ったあの時に付け足した条件が、正にこれだったから。賊らへと情けをかけてやる訳ではない。ただ…まだ幼い子供が、こんな怖い想いをしたその上に、人がバサバサと斬られて死ぬところなぞ、わざわざ見せてどうするのだと。そんな風に付け足した彼だったのだが、
“…。”
 人を切るのが生業な侍でなくとも、至極当然のことと言わんばかりに。農民の長老までもが“なんで殺さなかったのだ?”と思っているのにね。言われてみれば、確かに彼の言いようは正しかったのだけれども、それって果たして“侍”に必要な判断や対処なのだろうか。

 “…。”

 奥が深い男だと、知ってたつもりでもまたあらためて、新しいところを発見させてくれる飽きない奴だと。今回のはちょっぴり複雑な想いと共に、噛みしめてしまった久蔵だったりする。





            ◇



 現場へと戻れば、あらかたの始末は済んでおり。それぞれを後ろ手に縛ったその上で、何人かに分けて大きな木の根元へと結わえつけ、州廻りの役人が来るのが明日だから、それまでは一応の用心、慣れのない村人たちに代わり、彼らが見張りにとついていることにして。

  「…。」

 陽が落ちかかるまでは間があったが、それでも風が少々冷たくなって来た頃合い。気を利かせた村人たちが、温かい食事をと運んで来てくれたものを交替で食べての一息ついていたところへ。傍らの茂みがかさと音を立てたので、木立に凭れて座り込み、眸を伏せて眠っていたかに見えた久蔵がその肩口へと片手を上げかけたものの、
「お侍様。」
 幼い声が立ったため、警戒を解くと背に負うたままだった刀の柄から手を下ろす。こっそりと姿を現したのは、人質にされていたあの童女であったからで。何とも言葉を返さぬ久蔵に代わり、
「これ、お妙殿。」
 少しほど離れたところにいた勘兵衛が、これへはさすがに見とがめての声を掛け、
「此処は危ないから来てはいかんと、祖父殿から言われなんだか?」
 非日常体験をしてしまったが故、落ち着けぬあまりのことであれ、はしゃいでの発散もほどほどが大事。ましてや此処は、その“怖い体験”をした現場だ。その辺りを慮っての言いようをした壮年へ、だが、小さな女傑は、さらさらとした髪の裾を揺らしもってのかぶりを振って、
「平気ですvv」
 あんな偉そうにしてた大人たちも、今は全員縛られて太い樹につながれている。こうまでの数の大人の人たちが、揃って“お助け〜っ”て泣きそうになったの見たのは初めてだと。むしろ くすくすと笑うほどの豪気な少女は、恥じ入ってか身を縮めた盗賊たちには関心はないらしく、

 「かごめかごめを唄ったの、お侍様ですか?」

 それを確かめたかったらしくて、さっきから口を開かない真っ赤なお衣装のお武家様へ、わくわくというお顔を向けて来る。別段、邪険に振り払う理由もないので、
「…いかにも。」
 ぼそりと短く答えた久蔵へ、
「どしてあんな時に唄ったですか?」
 里の方でも、長老様やらおっ母様から“何がどうなった”と次第を聞かれたのだが、そこのところだけは誰も信じてくれない。まだどこか物腰の穏やかそうな、人性が練れていそうな勘兵衛の方ならいざ知らず。いかにも冷然としていて人を寄せつけぬという風貌・態度をしていたお侍様が、そんな大事なときに何でまた、童歌なぞ歌うのだと、全く取り合ってくれなくて。それが口惜しい彼女であるらしく、ねえねえどうしてと、本人へ訊きに来たらしいところがまた、
“コマチ殿より上かも知れぬの。”
 怖いもの知らずにもほどがあると、こっそり苦笑を零した勘兵衛を…ちらっと睨んで、さて。

 「この村のは、最後に全員しゃがむからだ。」
 「???」

 相変わらずに端的な言いようをする久蔵なので、それでなくとも子供のお妙には、省略されていた部分がないと全く意味が通じない。同じところから見張っていても意味がないのでと、彼からは距離を取った位置にいた勘兵衛が、さあどうするかなと眺めておれば、
「かごめかごめのことですか?」
「…。」
 是と頷いた久蔵の応じへ、お嬢さんはいかにも鹿爪らしく“う〜ん”と考えて見せ、
「…あ、そか。」
 やっと気がついたらしいのが、
「お唄の最後でお妙もしゃがむんじゃないかって思ったの?」
 その気配をだけ、斬らないように、木っ端の落下先にしないように配慮すればいいと。そんな目印にするがため、そんな突飛なことをした彼であったらしくって。

 “…そうであったか。”

 こちら様も実は今の今、あんな奇矯な行動のその事情がやっと判った勘兵衛同様、凄いことを自分で気がつけたのと、わくわくと身を乗り出して訊く幼子へ。赤い眸をした死神さんは、その線の細いお顔に滲み出した甘やかさへと、
「あ…。////////
 それまで物怖じしなかった童女が初めて真っ赤になったほどの嫋やかさで、それはそれは柔らかに微笑ってから、
「…。」
 そうですよと、頷いて見せたのだった。





            ◇



 翌日の早朝にも、護送用の運搬船を駆って州廻りの役人たちがやって来て。勘兵衛らには顔なじみの相手だったので、軽い会釈を交わし合っての後、無事に罪人たちを引き渡し。それではと、お侍様がたの方も出立と相成った。急なこととて、お妙や村の衆たちも多少驚いていたようだったが、用向きが済んだのに居残る理由もないのだから。名残りは惜しまれたが すがられるほどでもなくて。
『本当にこんなものでよろしいだかか?』
 今回の手合いは特に賞金首だった訳ではないので、公けからの褒賞はなく。それでは何ですので、お礼に何なりとお申し付けくだされと言って来た長老へは。久蔵が古廟や蔵を見せてもらい、そこにあった錆びた刀と古ぼけた巻物を一つずつ、ほしいと要請したのだが。あまりに汚いそれらが欲しいだなどとと、何とも怪訝そうなお顔をされてしまった。これこれという説明はしなかったので、尚のこと。けったいなお人だったと、お妙の孫子の代まで語り継がれるに違いなく。
『…月舟近虎の脇差しに、浅井信綱の淡彩画だ。』
 目利きの久蔵にしてみれば、いづれも名のある結構なお宝なのだそうだが、これもまたいつものことなので勘兵衛も慣れたもの。あまりに高価なものである時は、さすがに後から一筆書いて知らせもするけれど、どうで価値など知らないままに腐らせかけていたものなれば、価値を知る人の手に渡って役に立った方がよほどよいと思うので。専門外だからとの立場から、あまりごちゃごちゃしたことは言わない。二つ隣りの里までを今日の内にも踏破するべく、颯爽とした足取りでゆく野辺の道は、木立ちに入れば若葉を透かす木洩れ陽が軽やかに弾けて、いかにも初夏が近いことを思わせるいい日和に恵まれて。それほど話のネタがあるでなし、それでも時折、互いが目にした小鳥の影やら風の匂いに、相手が気づいているかどうかと、優しい視線を遣り取りする。そんな静かな道行きをさくさくと進めて幾刻か。

  「島田。」

 日頃からも感情の乗らない声で話すことの多い彼だが、それでもこれは…少々あらたまった感のあった声だと気づいた勘兵衛。わざわざ足を停め、少し後になっていた連れを振り返り、目顔で“どうした?”と促せば、
「どうして俺にはやたら“無事か?”と案じるのだ?」
「???」
 大切な伴侶の心配をしてはいけないのでしょうかと。僭越ながらの場外からの声が聞こえた訳でもないだろに、
「策を講じたのはお主だという時でさえ、真っ先にそれを問うてくる。」
 今回のような例は稀で、大概は勘兵衛が策を練る。それにしたところで…結局 根幹的な部分へは たった二人でかかる場合が多いため、結構キツい段取りをもっての、豪快な策であることも珍しくはなく。多勢を相手にするような場へたった一人で躍り込まされたり、人質を逃がす時間稼ぎにと、孤立無援なままの戦いを強いられたりすることもざらな久蔵は、だが、そういう戦術や作戦は嫌いではない。むしろ、自分が思う存分暴れられるようにと、わざわざ偏りや無謀という要素を組んでの采配を為してくれているのではなかろうか、などと、心憎い気配りのようにさえ感じてしまうほどであり。なんてまあ、乱暴者な新妻があったものなのやら。
(笑) そういった扱いをするというのは、少なからず久蔵の腕や度量を見込んでのこと。まさかに捨て駒として犬死にさせるつもりはなかろう勘兵衛だろうに、ではどうして、ちゃんと役割を果たして帰還した久蔵へ“無事か?”といちいち案じるのか。
「…。」
 その矛盾が妙に気になる剣豪殿であるらしい。とはいえ、
「…久蔵?」
 軍師殿の側にしてみれば…あくまでも策自体へは、知恵と機転と着手する顔触れの能力とを踏まえて構えるけれど、実地においてはそうまで怜悧さを徹底させた、杓子定規な考えで配置する訳でなし。怪我をしてやいないかと案じるのもまた、叱られる筋のことでもなかろうにと、
“…矜持が高い故に、だろうかの。”
 どうでしょうかね。
(苦笑) ともあれ、今の彼はそこのところへ、ちょっとばかりの“もの申す”がしたいらしく、

 「以前、シチが言っていた。」

 大戦時に軍で部隊を率いて前線で立ち働いていた勘兵衛様は、そりゃあお強い方でしたが。あまりにお強かったため、部下が到底ついて行けない作戦を構えることも少なくはなくて。
『ご自分が飛び抜けて腕の立つ身だということ、把握してらっしゃらなかったのかもしれません。』
 アタシなんかが、まだまだ二十そこそこの若輩だってのに副官として配属されたのも、あまりに恐ろしい部隊ゆえ、なり手がいなかったからだって話でしてねと。苦笑をしつつ付け足して、
『さすがに…戦局が何とはなく見えて来た頃合いになって来ると、無駄には死ぬなと部下へも徹底して言い置くようになられて。』
 ご自分が捨て身で血路を開いて、少しでも多くを逃がすことをこそ目指すようになられたものだから。負け戦の大将、島田勘兵衛などという、不名誉な言われようをされるようにもなられてしまった、と。こぼしていたのを思い出したらしく、
「お主は昔、自分に出来ることが基準になっていたのだろう?」
 相変わらずの言葉足らず。とはいえ、こればかりは…勘兵衛にも、何が言いたい彼なのかは判りやすかったらしくって。
「………。」
 今回の仕事でも、あの童女を抱えて出て来た久蔵へ、それはいたわるような眼差しを向けて来た勘兵衛であり、まさかにあの程度の相手から、とんでもない深手を負わされようとは思ってもおるまいが、

 「俺は、アテにはならぬのか?」

 無事に戻って来た姿を見て、それでやっと安堵するような。そんなまで頼りにならぬ存在かと、そういう方向へ少々カチンと来ていたらしき、赤い眸の若侍殿。

 「………。」

 頭上を見上げれば、万華鏡を覗いた中の模様のように。幼い緑に淡く染まった若葉が、幾重にも重なり合っていて。時折吹く風に、陽を透かしてゆらゆらと梢ごと揺れている。久蔵の淡い金の髪や白い顔へもその陰は落ち、動かぬ表情の代わりのように、淡い陰が揺れている。さわさわと静かな、木葉擦れの音だけがしているだけ。草いきれの香りもまだまだ仄かな、そんな初夏の小道に立ち止まっていた二人だったが。

  「何も、腕にだけ惚れたわけではないからの。」

 勘兵衛の表情はあくまでも静かで。だからこそ、一瞬、何を言われたのかが、久蔵には判らなくて。

  「…………………………………………っ。/////////

 赤い眸が見開かれたその瞬間に丁度、さわと吹き来た緑の風に、綿毛のような額髪がひらりと揺れて躍ったその拍子。

 「…っ! ば、ばかものっ!/////////

 往来で何を馬鹿なことを口走っておるかっ、と。耳から頬から目許から、それは判りやすいほど真っ赤になってしまい。大きに狼狽したまま、こちらに背を向け、歩き出す彼であり。

 「…。」

 何ともかわいいものよと。いかにも肩へ力が入ったままな細い背中を眺めつつ、声なきままにて“くすり”と微笑った壮年へ、

 「…。」

 ひたり立ち止まった赤侍。肩越しに振り返り、やはり…淡い緑染まった若葉が落とす陰の中、その蓬髪を揺らしている勘兵衛を眺めやり、小さな声にて呟いた。

 「……………俺も、だ。」

 確かに、秀でたところを持つ、人並外れて優れた者だから認めた。だが、刀の腕だけに惹かれたのはあくまでも切っ掛けでしかなく。軍師ではあるが、即妙怜悧と言うよりも、堅実頑迷にして…どちらかといえば不器用で。経験値からの老練にして老獪な手練手管という蓄積を、いかに繰り出すかに長けている古狸。侍であることを除いたなら、情けないところも多かりしな人物なのに。だからこその温かさの方こそが、今や愛おしくてならないから。


  ――― 何か言ったか?
       何でもない。////////
       ??? 何を赤くなっておる。
       うるさいっ、黙って歩け。///////
       案ずるな。誰も通ってはおらぬから。
       ??
       お主の珍しい睦言も、聞かれてはおらぬということよ。
       〜〜〜〜〜っ!///////


 いやはや。いい気候になって来ましたが、だからって蕩けるような甘さはどうかほどほどにと。風に揺れてる路傍のお花が、ご両人へ呆れたように手を振っていたそうな。






  〜Fine〜  07.4.03.〜4.04.

  *タイトルのネタ、童謡を使っての小細工をとだけ思いついて、
   それでと書き始めた、あくまでも“活劇目的”のお話でしたが、
   気がつけば…何をどっぷりと惚気合ってる方々なんでしょか。
   あ、いつもか。
(苦笑)

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